東京都港区に住む自営業、井上笑子(えみこ)さんは今年の夏、マイカーを手放した。それまで使っていた月額4万5000円の駐車場がなくなり、7万円の駐車場を借りなければいけなくなったからだ。 ■表でチェック■ 車種別保有台数の推移 だが、母親の通院のために車は欠かせない。代わりに利用を始めたのが、1台の車を多人数で共同利用する「カーシェアリング」。自宅近くの駐車場にカーシェアリング用としておかれている小型車が井上さんの新たな“マイカー”だ。 井上さんが利用しているのは、カーシェアリング最大手のオリックス自動車が展開する「プチレンタ」。初期登録料と毎月の基本使用料が必要だが、利用時は15分160円からの時間料金と1キロ当たり19〜20円の距離料金を払うだけ。利用料金にはガソリン代も含まれている。 マイカーの維持費として月に10万円近くもかかっていたという井上さんだが、現在は2万〜3万円程度。「自動車は必要な時にだけ使えれば十分。マイカーはもういらない」。井上さんの意識は大きく変わった。 ◇ カーシェアリングを利用してから、井上さんにはもう一つ変わったことがある。「近くならタクシーの方が安いし、遠くに行くには地下鉄やバスがいい」。移動コストを計算し、最良の手段を選ぶようになったのだ。そんなコスト意識が交通機関の選択にどう影響するのかを調べる社会実験が名古屋市内で10月から行われている。 「課金しました」。自動車を運転中、携帯電話から音声が流れる。この携帯電話は、衛星利用測位システム(GPS)機能付きで、実験に参加するモニターに配布された。市中心部の約25平方キロに入れば、自動的に口座から500円が引き落とされ、区域内で買い物をしたり、駐車場を利用したりした際のレシートを携帯電話のカメラで撮って送信すれば、300円が返金される仕組みだ。 実験の狙いは、課金によって混雑する市街地の通り抜けや違法駐車を減らすこと。公共交通機関の利用を促し、渋滞を緩和できれば、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる。実際に効果はあった。モニターの名古屋市中川区の主婦、桜井香代子さんは「課金されるという意識があったので、できるだけ地下鉄で移動していた」と打ち明ける。 ◇ 資源エネルギー庁によると、今年8月の国内ガソリン販売量は前年同月比14・0%も減少した。8月はガソリン店頭価格(全国平均)が1リットル当たり185・1円を記録、過去最高値を更新した時期だ。コストと自動車利用が反比例の関係にあることは明白だ。 名古屋市の社会実験を主導する森川高行・名古屋大学大学院教授は「極端にいえば、道路を1キロ走行するにつき何円という課金制度があれば、CO2の排出量はもっと確実に減らせる」と強調する。 コストと自動車利用の関係に注目しているのは名古屋市だけではない。横浜市も同様の社会実験を検討しており、カーシェアリングの利用促進に動き出した自治体もある。 「お金がかかるマイカーはなくてもいい」。代替交通機関が充実した大都市圏で芽生え始めたそんな意識が、温暖化問題にも影響を与えようとしている。【関連記事】・ 自動車は複数で共同利用 「カーシェアリング」事業に熱視線 ・ カーシェア事業に熱視線 ガソリン高騰を逆手に ・ 関西でも注目集める「カーシェアリング」 ・ 尾瀬のバスにバイオ燃料 環境のため廃食用油利用 ・ マイカー世帯保有数2年連続減 新車販売不振など影響
カーシェアリングで変わる意識
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081117-00000561-san-soci
2008年11月17日
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